徒然読書感想記

管理人の読書覚書。基本的にネタバレなし。 好みは推理もの。 映画の感想もあり。 2010年livedoorBlogにお引っ越し。since200408

 宮部みゆき

宮部みゆき「あかんべえ」

宮部みゆき「あかんべえ」2002/PHP研究所

 PHPもこういうのを出すんだなぁ――新書しか知らない私の感想。
 宮部得意の時代物、長編。短編でないのが不思議なくらい、と思ったら連載ものだったようす。なるほど。

 重い病気にかかってから「お化けさん」が見えるようになってしまったおりん。
 両親が料理屋を興そうと白羽の矢を立てた深川の建物には、5人ものお化けさんが住み着いていた――
 その、お化けさんにまつわるお話。 続きを読む

宮部みゆき「あやし」

 人のこころの闇に棲む鬼

宮部みゆき「あやし」2003/角川文庫

 いやーやっぱり宮部みゆきはうまいですな! 著者得意の江戸ものです。
 夜な夜な起こる怪奇現象。この怪談が身に迫ってくるのは、出てくるオバケが、人の情、そして業のなせる技だから。
 そして、人情を描かせたら随一の宮部です。

 雨の中、たたずむぬかるみに何を見たか。
 人は鬼にも仏にもなれる。
 そんな短編集。
 雨の夜長にどうぞ。

宮部みゆき「人質カノン」

宮部みゆき「人質カノン」1996,2001/文藝春秋 文春文庫

 短編集。一作目の表題作を読んで伏線があまりにまるわかりで、アレ? これってもしかして古い話? と思ったら10年前でした。
 全7編。
 共通項は、どれも街角での出会い。(探偵事務所に来た子どもは街角じゃないかもしれないが)
 あと少し、タイミングがずれていればなかったであろう出会い。そこから始まる、しばしの非日常生活。
 電車で拾った手帳の持ち主を追って、もしかして事件に巻き込まれているのかも? と想像する学生。
 恋人に捨てられ、自殺しようと街をふらついている時に、いじめられた小学生に付き合って夜の学校に忍び込むOL。
 同じマンションの水漏れが原因で知り合った家族の、家庭の事情にわが身を振り返る主婦。
 ささいなミステリーが、主人公達の日常にスパイスを与え、また自分自身の生活に戻っていく活力になっています。
 そのさりげなさが、普通の人に対する、著者のエールに感じられます。

宮部みゆき「ドリーム・バスター 2」

宮部みゆき「ドリーム・バスター 2」2003/徳間書店

 前作は世界の説明が多くて物語として楽しむのはどうだろう・・・・・・って感じだったんですが、今回は素直に面白かったです!

 人間の精神と肉体を分離させ、不老不死を目指した「プロジェクト・ナイトメア」
 実験の失敗は被験者だった犯罪者たちを精神体にして、こことは別世界の「地球」へと飛ばしてしまう。
 シェン達“ドリーム・バスター”は、地球の人々の脳に潜り込んだ前科者たちを捕まえるのが生業。
 人々の夢の中で、彼らは脱走犯と対峙する―― 続きを読む

宮部みゆき「誰か」

 男と女はね、くっついていると、品性まで似てくるもんだよ。

宮部みゆき「誰か」2003/実業之日本社

 老人が自転車で轢き殺された。今多コンツェルン会長の個人運転手をしていた男だった。犯人は未だわからずじまい。遺族の娘は父の本を書きたいという。それがマスコミに取り上げられれば、犯人探しに役立つという目論見だ。
 半ば会長命令で相談&指南役になった娘婿でもと編集者の杉村は、力になることを約束し、取材を重ねる。
 が、姉の聡美は乗り気ではなかった。父の過去を掘り返すと、忌まわしいものまで蘇ってしまうというのだ・・・・・・。

 なんだかホラーのような語り口になってしまった(笑)いえ、ホラーじゃないですよ。
 謎解きの面白さは勿論のこと、最後の意外な着地点に胸を痛めました。さすが宮部みゆき。人情を書かせたら右に出るものはいませんよ。
 あまりいうとネタバレなので言えませんが、彼の人の登場シーンで感じた違和感というのは存外、はずれないものなのだなぁと思いましたね。ちょっとあれ、と思ったんですよね。それが最後にあんな卑しさを見せ付けられるとは。いやはや。
 聡美の「こんなこと頼んでませんよね?」という涙が悲しいです。

 最初の一行は「口に毒がある」という杉村の母の言葉。だからよく見極めろ、と続きます。いいこと言うねぇ、おかあつぁん!
プロフィール

story2004

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